-2004.04.11-
あの子から、
ご飯食べ行こ。そんな電話がかかってきた。
胸の昂ぶり。ブリブリ。
いてもたってもいられずに、家を飛び出す。
待ち合わせ場所に4時間前に到着する。
時間をつぶそうと街をふらふら歩いていると
少なく見積もっても100は通った事のある並木道に
初めて目にする時計屋さんに見つけて。
まだたっぷり、3時間50分の暇を持て余す僕に
入店する以外の選択肢がありましょうか。
中は伽藍としていて
店員さんが暇そうにお喋りをしていた。
所狭しと4人の店員。
その内3人は揃いも揃った感じのギャル達で
あとの1人はどの角度から見てもおじさんなのだけど
ギャル達と同じ身振り手振りではしゃいでいる。
店に入っても誰も接客に来ないのが逆に救いで
時計を物色する。
かわいいな、と思う腕時計を見つけた。女性物だった。
でもかわいい。似合うだろうか?
仕草の可憐なおっさんを呼ぶ。
どうですかね、と聞いてみる。
当たり前のように褒められる。
女性用なんですけど。
当たり前のように問題がない旨伝えられる。
聞く相手を間違えた、と思いつつ
周りの友人になんて言われるだろう、と思った。
女々しい、なんて言われるんじゃないか。
1時間考える。
買う事にした。
おっさんが、必要以上に嬉しそうに見えた。
店を出て、100は通った事のある並木道。
僕にも行きつけの店ぐらいある。
その喫茶店に入る。
席に座り、いつものアイスティーを頼んで
腕時計を早速つけてみる。
時間を直す。
直して気づく。まだ2時間ある。
はて、どうしたものか。
でも嫌いじゃないな、こういう時間。
そんな風に思う。
今夜の食事のシミュレーションをしてみる。
あれこれ余計な事を考えてしまって
しなきゃよかったと思った。
真新しい時計に新たな一瞥をなげる
シミュレーションをほぼ2時間していた事に気づく。
あわてて待ち合わせ場所に向かう。
そこに向かう途中、電話が鳴った。
何処にいるの、と聞く彼女と
何処にいるの、と聞き返す僕は、
同じ並木道を向かい合って歩いている、という事に気づく。
お互いそのまま歩けば、28秒後には会う。
まだ彼女は見えない。
並木道は、ボロロ族の男が引いた弓の様に、美しい曲線を描いている。
心臓の鼓動が高速ブレイクビーツチューンを奏でる。
一瞬、逆を向いて逃げ出そうか、と考える。
その時、緩い曲線の向こうから。 彼女の姿が見えた。
そこからしばらく記憶は途切れる。
レストランについていた二人は
気の利かない店員に、彼女がかすむくらい距離のあるテーブルに案内される。
それに救われた気もする。
たわいもない、でもこっちにとっては一語一語に
否が応でもビブラートのかかる会話。
途方もなく長く感じる沈黙。万里の先がかすんで見えない。
とりあえず注文しよっか・・・。 逃げの一手で。
彼女の相変わらずの注文の量の多さに驚き、ほころぶ。
たくさん食う子はかわいいな。細いのにな。
よく食うデブじゃ、
愛国心を謳う者がそこはかとなく胡散臭いぐらい当たり前でつまらん。
注文が一通りすんで、しばしの静寂の後、
彼女が驚いた表情で僕に
その華奢な手首に巻かれた時計を、何も言わずに見せてきた。
彼女のそれは
僕のこの、今日買った黒い時計の、色違い。
4時間前に家を出るのもいいもんだ。 おそろいだ。
彼女は僕に時計を見せて、といい
僕は、僕の黒を手渡し、彼女の青を手に取る。
彼女は僕の黒を楽しげにつける。
つけ終わった彼女は時計をつけた左腕をさっと机の下に隠し
急にすっとぼけた顔をして、
時計とは何の関係もない、オスマントルコ帝国の話を始めた。
「おいっ」
と。
僕は気がついたら。
突っ込んでいた。
あのボケを
ながせばよかったのに。
そのまま、ながせたらよかったのに。
妄想癖の末期症状
懐かしい文章ですね。
返信削除Xangaで読んだのかな?
久しぶりにxnga行ったら全部文字化けしてました。
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